花屋に花束を買いに行ったら、竜胆があったのでふと思いついたネタ。
「ねぇソーマ、知ってる?」
あの男の幼馴染と言う彼女は、ソーマに気安く声をかけてくる珍しい人種の一人だ。その日も自動販売機で飲み物を買っているソーマに、世間話を持ちかけてきた。
「雨宮姉弟の名前ってね…苗字じゃなくて名前の方だけど、あれってどちらも花の名前なのよ」
花、と言うものに関して知識はある。アラガミが現れる前には多種多様に有ったらしい。だが、生憎ソーマは見た事は無かった。
「名は体を現すって言うけど、二人とも本当にイメージぴったりよ。昔のライブラリ見れば載ってると思うから、今度時間があったら見てみたら」
そう言って楽しそうに、彼女は笑った。
あれから少々の時が経ち、ソーマはふとあの時の事を思い出した。調べ物があってターミナルを立ち上げた時だ。
暇な訳ではなかったが、取り立てて急ぎの任務も無かった為、ついでのつもりで検索をかけた。
『リンドウ』
出てきたのは一つの写真と短い説明文。その写真を見てソーマは、なるほどと少しだけ笑った。
深く鮮やかな紫色の、派手ではないが美しい花。だがその花を支える茎は、太く、ごつく、力強い。
そっと伸ばした指で、ターミナルの表面をなぞる。
「確かに、よく似てる」
笑いたかったのになぜか嗚咽が漏れかけて、瞬間唇を噛んだ。それでもあふれる雫は止まらず、ソーマは目を閉じる。
これが、最後だ。
捜索も打ち切られたあの男を想い泣くのは。
心の中で言い聞かせるように呟いて、ソーマはターミナルを閉じた。
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子供の頃初めて竜胆を見て「こんなにゴツイ花だったんだ!」と驚きました。
花(顔)だけ見ると綺麗なのに、全体で見るとゴツイ…うん、まさに名は体を現す。本当は甘いのかホノボノで書くつもりだったんですが、気がついたらこんな事に。おかしいな?