相変わらず家のソーマはリンドウの事が好き過ぎる…。
キスの格言で書きかけて、結局止めていた物を書き上げました。
「掌の上ならば懇願のキス」の別バージョン。
こちらはソーマがリンドウの掌に口付けております。
「俺は、ここに居ても良いんだろうか」
自嘲を浮かべてリンドウが言った言葉は、ソーマにとって衝撃だった。
「当たり前…だろうが」
かろうじて返した言葉は、そんなありふれたモノ。
「なんで、そんなバカな事を……」
「馬鹿、かねぇ」
言いながら己の手に視線を落すリンドウに、ソーマは眉を寄せた。
気持ちは、わからなくは無い。
それはきっとソーマ自身が、18年間抱えてきた闇。
最近になってようやく、己を肯定できるようになった…リンドウ達のおかげで。
だが、リンドウは違う。
今更こんな形で、揺らいでしまった。そんな彼の痛みも動揺も、ソーマにはわからない、理解できない。
だから…軽々しく慰めの言葉なんて言えないけれど。
彼の右手を、そっと取る。
ゴツゴツとした、黒い……アラガミの、腕。
「ソーマ?」
不思議そうにこちらを見るリンドウの、その掌へ口付けを落とす。
「っ!?」
驚いたのか慌てて腕を引こうとするリンドウの手を、きつく掴んで。
「お前の右手が、どんな形になろうが」
「………」
「お前の姿が、アラガミになろうが。お前は、お前だろうが」
そっと見上げれば、驚きに見開かれたリンドウの目。
「ソーマ…」
「お前が、今のお前自身を認めなくても…俺は、」
その先は言葉にならず、もどかしさにソーマは、リンドウの右掌へ歯を立てた。