初めの話、ソーマサイド。
最後の荒神を叩きのめし、振り向いた時そこに立っていたのは自分だけだった。
最初の予定ではもっと簡単な任務だった。
オウガテイルとサイゴート、そしてコクーンメイデンが少々の軽い任務。
行ってみれば居たのは、オウガテイルとサイゴートにコクーンメイデン…そしてシユウとボルグ・カムラン堕天が一体ずつ。
撤退する暇も、守る余裕もなかった。倒れただけならばリンクエイドも出来たが、共に行った者は新人ばかりで、薄い装甲では身を守ることも出来ずボルグ・カムラン堕天の一撃で死んでしまった。
血まみれのままの体を引き摺ってアナグラに戻ると、一人だけであるソーマに視線が集まる。
「またかよ」
はき捨てるような声。
「今回は誰だ?」
「シャレにならねぇよな」
「死神が」
聞えよがしに言わなくても、精度の良すぎる耳は全部聞こえる。ソーマは表情も動かさず、受付へと報告するために足を向けた。
「よぉ、ソーマ」
かけられた声に、反射で上げた視線。真っ直ぐこちらへ向かってくる男と目が合う。
初任務の時に組んだ男だ。
雨宮リンドウ。
あの初任務以来組んで仕事をする事は無かったけれど、良く彼の名は耳にする。共に行った者を必ず生きて返す、誰よりも強いゴットイーター。
近づいてくる男に何を言われるのかと、思わず足を止める。
と、すいっと伸ばされた手が血に塗れているソーマのフード越しに頭を撫でた。
「お帰り。お疲れさん」
当たり前のように、言われた言葉と与えられた手のひら。
それはどちらも、生まれて初めて与えられた物だ。
あの時、初めて思った。
この優しい手を守りたいと。
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データが行方不明で遅くなりましたが、実は最初に書いたリンソマ。むしろリンドウ←ソーマですが。
ソーマは15歳位のイメージで、ソーマがリンドウへの想いを自覚した話。
「眠る楽園」とセットになっております。