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風早大団円EDのネタバレあり。
偽者率高し。あ、前回書いてたパラレルとは違います。







 皆が鍋を突きながら盛り上がっているのを、風早が滅多に飲まないわりに隠し持っていたワインを飲みながら柊は眺めていた。
 平和な国、平和な世界。
 幸せそうに戯れる千尋たちを眺めていた視線が、静かに部屋を出る風早の姿を捉える。足りない食材を補う為に色々加えられ、千尋曰く闇なべという物に化した鍋は皆の知らぬ食材も多く投入されており、好奇心が勝るのか皆の意識はそちらに向いている。
 柊はグラスを置くと、やはり気配を消して立ち上がった。

 風早は廊下を進んだ奥の、縁側に座っていた。彼の隣には盆と冷酒、そしてグラスが二つ置いてある。
「おや、誰かと逢引の約束でしたか?」
 からかう様に告げれば、彼は先ほどまで浮かべていたうそ臭い笑みを消し、真剣な眼差しで柊を見上げてきた。
「あなたを、待っていたんです。あなたなら付いてくるだろうと」
 以外に思いつつ、柊は遠慮なくその隣に座る。
 淡い…隣の男の髪の色に似た涼しげなグラスに注がれる、透明の酒。
「こちらの酒は、少々強いですね」
「まぁ、あの時代の酒は、あまりアルコールが高くはありませんから」
 そんな弱い酒でも一気に飲めば酔うくせに、とは思っていても口には出さず、柊は甘みのある酒で唇を濡らした。
「それで、私を待っていたと言う事は、私に何か御用ですか?」
「………」
 風早は静かに空を見上げる。その視線につられて柊も空を見上げれば、床に置いていた手の上に、彼の手が重なった。
「あなたは、何時のあなたですか?」
「……」
「ここに来る寸前の世界で、あなたはもう……」
 手を握る力が、強くなる。柊は小さく笑うと、視線を伏せた。
「私が来た世界では、ようやく我が君が世界を救った所です」
「柊」
「ふと見えたのですよ。ここにくれば、もう一度会える、と」
 未来の、君達に。
「柊、」
 声に苦しげな色が混じった事に気付き、柊は苦笑して風早へ視線を向ける。
「君が、そんな顔をする事は無いでしょう?私の先は、既に定まっている」
 既定伝承に描かれた未来は、誰にも覆せない。
「流れる時の砂は、君にも留められない」
 この世界で千尋を目覚めさせる時に、風早に告げた言葉と同じ言葉を口にする。あの時には既に、この未来すら定まっていたのだ。
「柊、それでも俺はその砂を止めたい」
 つかまれた手を引かれ、体勢が崩れた所で思い切り抱きしめられる。
「風は……」
「この…この世界は、既定伝承の外にある。多少は関わっても、流れからは外れている。だから…」
 このままここに居れば、あるいはあの未来を覆せるのではないのかと。
「風早、私達は、ずっとここに居るわけには行かない」
「千尋は、この休暇が終われば確かに戻らなくてはいけない。あの国は、彼女が居なければ立ち行かないし。でも、君は」
 言葉を遮るように、柊は抱きしめてくる風早の肩をそっと押した。
「柊!」
「それで?この誰も知らぬ世界で、私に一人で生きろと?」
 君の、居ない世界で。 
 心の中での呟きが聞こえた訳では無いだろうが、風早は困ったように笑うと眼帯の上に唇を押し当ててきた。




 柊の言いたい事は、理解できる。自分がここに来た時は、千尋と那岐がいた。守るべき子供達が。だが柊に求めているのは、ただ一人ここに残る事だ。
 だが風早は、柊を何とか説得しなければならないのだ。彼に生きていて欲しいのならば。
「一人じゃない、俺が居る」
「馬鹿な」
「馬鹿じゃない」
 また、直ぐに時代は繰り返されるかも知れない。再び千年巻き戻り、同じ事が繰り返されるのかも知れない。けれど。
「確かに、今はまだずっとは無理かも知れないけど」
 千尋の治世が来てまだそんなに時は経っていない。まだ国の建て直しに誰もが忙しい。
「でも、出来るだけここに来るし。それに何時かは、ずっと一緒に居られるようにするから」
 せめてこの時代は、
「君に、生を、未来を生きて欲しい」
 重ねた唇は、震えている。その震えが己の物か彼の物か、風早には解らなかった。



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えーと、風早の大団円EDの、皆で鍋が可愛かったのでその設定でラブラブを書きたかったんですが。
何をどう間違えればこうなるんだ(汗)。
幸せな二人が書きたいです。の、筈なのになー。おかしい。
プロフィール

アサ

Author:アサ
二次創作を吐き出すブログ。
男同士や男女や女同士の恋愛を扱う物が多いです。
苦手な方はお気をつけ下さい。

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