旧サイトから。
甘くない。
「止めなさい。私などに手を出せば、貴方を貶める事になりますよ」
その言葉に、レインは眉を寄せて押し倒したニクスの顔を覗き込む。
「この状況で、言うのはそれだけか?」
無理やり、押さえつけた。
そのまま唇を重ね、手をきつく拘束し。跳ね飛ばされても、侮蔑の言葉を投げられても当然の愚行を犯していると、自覚している。
全てを覆い隠し、人を小ばかにした態度がムカついた。何時も取り澄ましたその表情を崩したかった。
何より、本当の彼を…見たかったのだ。
時々見せる、どこか切なげな表情の、意味を知りたい。
それなのに、結局彼は何も変わらない。
男に押し倒されて圧し掛かられて、レインが何をなそうとしているのか、判らないほど初心でもあるまいに。
それとも、慣れているのだろうか。男に、押し倒されて行われる行為に。
この男の性格だ。過去に彼に触れた者に、恋愛感情を持っていたとは考えがたい。この頑ななやわらかい殻は、少々の年数で覆える物とは思えなかった。
ならば、前に彼を抱いた相手は、どんな風に彼に触れたのだろう。
レインに乱された服の合間から、日に触れぬ白い肌が見える。
この白い肌を侵略した男は、何を考えていたのか。自分と同じように苛立ちをぶつけたか、それともただ肉欲のためか。
あるいは、狂おしい恋情だろうか?
ふと胸が痛む。
別に、惚れたはれたで抱こうとした訳じゃないくせに。
彼の態度に苛立って、暴こうと手を伸ばしただけのくせに。
だけど、レインは気付いていた。
知りたいと思わなければ……惹かれて、居なければ、彼の態度にここまで苛立ちはしない。
自分でも吐き気がするような、忌むべき犯罪行為を酷使して、彼を押さえつけたのは…奥底に眠る想いの為だ。
それを、だが認めることは出来ずに、ただレインはそっと、シャツの間からのぞく鎖骨へ口付けを落とした。
初のレイン×ニクス。
偽っているのはどっちか…微妙な所です。