旧サイトから。
「景時さんって、体温、低いですよね」
眠りに入る直前の、どこか幸せそうな柔らかな空気の中。
景時の腕の中、素肌同士を触れ合わせていた譲が、そう呟いた。
「え?そう?もしかして、寒い?」
折角心地よく眠りに付こうという時に、自分の体温がそれを邪魔してしまうのは心外だ。慌てて離れようとすると、譲はむずがるようにしがみついてきた。
「違います」
「な、何が?」
「今、じゃなくて、触れ合う、前」
抱きあう、その始まりの時を言っているらしい。
「嫌?」
「嫌じゃ、ないです。貴方の、冷たい手が、俺の体温で温まるのが、嬉しくて」
言いながら譲は、景時の手を掴んでやんわりと微笑む。
きっと寝ぼけているんだろうと思いながらも、素直に好意を表す譲に景時は赤面した。
「譲、くん」
「それに……本当なんだなって」
「何が?」
「手が冷たい人は、心が温かいって……」
まるで景時の手を温めるように、譲は掴んでいた景時の手に頬を摺り寄せて。
そのままストンと、眠りに落ちてしまった。
「……ゆ、譲くん?」
手を取られたまま、顔を真っ赤にした景時は、譲の顔を覗き込む。
「寝ちゃったの?」
散々譲の言葉に翻弄され、高鳴ってしまった胸の鼓動は収まらず、景時はとても眠れそうも無いのに。
「ずるいなぁ、もう」
さっさと眠りの国に行ってしまった譲に、景時は照れくさそうな笑みを浮かべて。
そっと譲の額に口付けを落とすと、景時は囁いた。
「譲くんが暖めてくれるのは……手だけじゃないんだよ?」
なぜだろう…なぜか景譲は異常に甘くなる……。