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守ってあげたい
守れたら良いのに。
望美は強くそう思う。
優しい笑みを浮かべ、全ての苦しみを覆い隠してしまう人。
その苦しみの全てから、守れたら良いのに。
「どうしたんですか?望美さん」
考え事をしていた為、うっかり弁慶の顔をジッと見つめてしまっていたらしい。弁慶が不思議そうに、こちらをのぞきこんでくる。
「僕の顔に何か付いていますか?」
君の澄んだ瞳に、そんな風にに見つめられたら、照れてしまいますよ。
さらりとそんな事を言う。ヒノエのように大げさな口説き文句ではなく、まるで本心のように聞こえるからたちの悪い言葉。
「弁慶さんって、ナチュラルたらしですよね」
「なちゅらるたらし?何ですか、それは」
不思議そうな彼に、『なんでもないです』と含みを持たせたまま誤魔化して。
「ひどい人ですね、気になるじゃないですか」
言って笑うから、望美も笑みを向けた。
「いいんです。たまには弁慶さんにも悩んでもらわないと」
「たまには、ですか?」
「そう」
戦況や戦術、戦いに平和。悩む事など沢山ある。弁慶は特に、それらを肩に自ら乗せて、きっと誰より悩んでいるのだろうと、そう思うけれど。
たまには、こんなバカみたいな小さな事で。
私の事で、悩んで欲しかった。
大きな苦しみは、脇に寄せて。
私はまだまだ力が足りなくて、全ての物から貴方を守る事は出来ないけれど。
「望美さん?」
「たまには、私の事で考え込んでください」
「………っ」
彼は驚いたように息を呑み、それから少し複雑な表情で
「あなたは、いけない人ですね」
小さくそう呟いた。
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昔、「守ってあげたい」と言う歌がありました。
タイトルはそこから。
弁慶神子……と言うより、神子弁慶な感じです。神子強い。