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少々(1~2週間位)入院しますので、地震前に書いてた物をUPしておきます。
30題と同じく昔に借りていたお題、5つのキスのお題(http://www.geocities.jp/gensou_yuugi/kiss5.html )です。
今回は「ノーマルその2」。短い雑文ばかりです。切ないのと甘いの半々かな?ちょっとヤンデレっぽいソーマも居ます。
ノーマルその2
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1.切ないキス
それはとても優しいキスだった。
何かを一人で抱えていると気付いていたから問いかけたソーマに、誤魔化すように彼が施した口付け。
「悪ぃな」
「もうすぐ、終わるから」
困ったように笑う彼に、それ以上問う事が出来なくて。
その後向かった先の任務で、彼は生死不明のまま行方知れずになった。
キス一つで誤魔化されずに、無理にでも聞き出せていたら。
今更悔やんでも、あの日のキスの記憶は、消えはしない。
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2.おめでとう!
「おめでとう」
言われた言葉が理解できず目を瞬かせるソーマに、アラタはにっこり笑った。
「だって、昨夜でしょう?」
「え…」
「処女貫つ……」
すかさずチョップがアラタの後頭部を襲う。
「痛い…」
「当たり前だ。何を下品な事ぬかしてるんだ」
アラタの後ろに立っていたのは、おめでとうを言うべきもう一人の相手だ。
「あ、リンドウさんもおめでとうございます」
「っ、何で、俺とソーマがそうなったって、お前……」
「やだな。俺の部屋はソーマの部屋の隣ですよ。しかも結構壁が薄くて、ソーマの声が丸聞こ……」
「消せ。キレイさっぱり消せ。お前に聞かせる為の声じゃない」
怒鳴るでもなく静かに、傍若無人な事を言うリンドウにアラタが笑う。
「あはは、自業自得って言葉知ってます?」
「なるほど、ならお前の記憶を消すために俺が今お前を殴り倒しても、お前の自業自得と…」
「いや、それを自業自得にされると流石に酷いかと。ねぇ、ソーマ……」
反応の無い背後のソーマにアラタは話を振りつつ振り向けば、ソーマは顔を真っ赤にして口を押さえていた。
別に笑うのをこらえているのでも、吐きそうになっているのでもなさそうだ。あまりの恥ずかしさに、声も出ないのだろう。青い目も少し潤んですら見える。
「ソ、」
初めて見るソーマの可愛らしくも色気のある表情にアラタが硬直していると、ぐいっとリンドウがアラタを押しのけソーマを抱きしめた。
「あーもう、ホントにお前は可愛いな」
そのまま完全にアラタの存在を忘れきったように、リンドウがソーマの唇を奪う。傍から見ていても赤面しそうなほど、深い口付けだ。
こうして見せ付けられるのは、からかう為に不用意に話題を振ったアラタの、まさしく自業自得だろう。
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これをおめでとうのキスと言い張りますよ。むしろ私こそがリンソマのちゅーを間近で観察したいです。
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3.髪に触れるキス
リンドウの「お願い」を、ソーマは断わらない。いや、断われないのだ。
惚れた弱みというやつだと、自覚している分居た堪れない。
リンドウもリンドウで基本は優しいので、そこまで無茶な「お願い」をしてくる事は滅多に無かった。
今夜もリンドウの「お願い」で彼の物を口に咥え奉仕をする。断われないのとは別に、この行為自体ソーマは別に嫌ではなかった。男の物を咥えるなんて冗談ではないが、相手がリンドウならば別だ。
あの無骨な手に髪を撫でられ、快楽を滲ませた甘い声がソーマを呼ぶ。
「ソーマ…いい子だ」
いい子はきっとこんな事しないと思うけれど、それがリンドウにとってイイコならばそれで良い。
大きすぎて口内に入りきらない先端にキスをし、吸い上げる。
「……く、あぁ、」
深い快楽の滲んだ声。口内に広がる青臭い苦味が、ソーマの体も快楽へと引きずり込む。粘ついて飲みにくいそれを必死で飲み下せば、顔を上げさせられ額へキスされた。
「飲まなくて良かったのに」
「……」
「でも、ありがとうな」
彼はいつもそう言うけれど、ソーマは飲みたいから飲んでいるのだ。
女ではないから下で彼の性をとどめる事は出来ない。唯一飲むことが、彼の性を体内に入れる方法なのだから。
こんな歪んだ、想いを、リンドウは知らない。ソーマも告げるつもりは無い。
髪を撫でられ顔中にキスが落され、ソーマは歪んだ自分を隠すように目を閉じた。
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ソーマが微妙にヤンデレっぽくてすみません…。我が家のソーマたんはご奉仕が好きっぽいですね。
髪に触れるキスは「髪に、触れるキス」「髪に触れる、キス」なのかわからなかったのでとりあえず後者に。
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4.窓越しのキス
フェンリルに入社し、最初に会った時から気になる存在だった。ぶっきらぼうな態度と裏腹に優しい彼は、何時だってどこか憂いがあって。
その憂いを消したいと、そう考えたのがはじまりだった。
彼が気になって見守って、そして彼がリンドウに想いを向けているのだと…気づいた時に己の想いが恋だったと自覚した。当然失恋も同時だった訳である。
それでも想いは消えなくて、リンドウが行方をくらませた後も帰って来てからも、ずっと見守り続けた。
そうして、気付いた事が一つ。
「サクヤさん。リンドウさんとソーマって」
「あら、気付いた?あれ、イワユル両想いの片想いって奴よ」
「やっぱり」
見ていれば想い合っているのは一目瞭然だったから恋人同士だと思っていたのだけど。どうも見てると二人そろって、片想いの目をして相手を見つめているのだ。
「馬鹿じゃないんですか、二人そろって」
「私もそう思うわ。何か二人そろって、窓越しにキスをしてるみたい。相手に気付かれないように、こっそりと」
それはあまりにも身勝手で、一途な愛。
「でも、ね」
呆れたような困ったような…母親のような笑みを浮かべながら、サクヤは片目をつぶった。
「案外あれで、満足してるのかもね。貴方も、含めて」
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5.傷を癒す口付け
重なる唇が心地よい。
「ソーマ」
耳をくすぐる甘い声も。
「お前を」
抱きしめてくる温もりも。
「愛してる」
包み込むタバコの香りすら全て。
幼い頃から隙間なく刻まれた心の傷を、染み込み内側から全て癒してくれた存在。
「リンドウ…」
名を呼び、腕を伸ばす。
この腕が彼の傷も、癒せればいいのに。