引き続き現在は配布を終了している『モノカキさんに30のお題』からお借りしていた物です。
リンソマばかりです。文とも呼べない会話だけもあり。ちらりと18禁っぽいのがあるので、一応18禁です。
今回は11~15まで。
少しテーマが難しくて、今回ポエムっぽさ全開です。お恥ずかしい。
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11. 37.5
大きく息を吐きながら倒れこめば、重いと文句を言いながらもソーマは受け止めてくれた。
先ほどまで快楽にとろけていた互いの熱は、いまだ少し高いまま。
暖かさに目を閉じ、互いの心音を感じあう。
「ソーマ」
「ん」
少し眠そうな声に笑い、そっと額を重ねた。
二人で沈むベッドの中は、少し熱い位でちょうどいい。
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12. 罪
「お前、何かあったか?」
リンドウが無理をしている、と。なぜかソーマは直感で思った。いつも通りの笑みと言葉なのに、妙にそれが引っかかる。
「何かって?」
「それがわからないから聞いてるんだ。様子がオカシイ」
ソーマは回りくどい事は苦手だったし、遠まわしに言ってたのではリンドウが惚ける隙を与えると、経験上わかっていた。それゆえの直球勝負だ。
リンドウは少し躊躇し、それから頭をガリガリと掻いた。
「まいったな…俺、そんなに露骨か?」
「俺から見れば、な」
「他の誰にも言われなかったし、ばれてねぇと思ってたんだけど。お前の俺への愛の力かねぇ」
ソーマはちらりとリンドウの顔を睨んだだけで、その軽口には答えなかった。下手に反応をすれば混ぜ返されて誤魔化されると思ったからだ。
じっとただ睨みつけていれば、リンドウは困ったような笑みを浮かべた。
「そんな風に見つめんなよ。あー、大した事じゃねぇんだけどな」
嘘だ、とソーマは思う。本当に大した事じゃないなら、この男がそんなに悩む筈も誤魔化す事も無い。
だがそれを突っ込む事はせず、ただ睨みつけ続ける。この男との長い付き合いで、口下手な自分が下手に言葉で促すより態度で示した方が効果的だと学んだ結果だ。
リンドウは再び頭を掻き、視線を泳がせ、それから大きく息を吐いた。
「本当に大した事じゃねぇんだけどな」
言い訳のように言い置いて、
「腕のアラガミは、消えた訳じゃねぇし、最近討伐に出ると嬉しそうに騒いでるのがわかる」
「っ!それは、」
「またいつ暴走して、俺はアラガミ化するかわからなねぇなあ、なんて考えて、ちっとな」
さらりと、今までの彼ならばけして言わなかっただろう、弱音。
今だって、彼は本当は言いたくなかった筈だ。それを、無理に聞き出した。
「悪い…」
「何でお前が、謝るんだよ」
何も言えずに黙ったソーマに、リンドウが謝罪する。そこで謝ってしまうリンドウに、そして何より謝らせた自分にソーマは腹がたった。
「んな顔すんなよ。ちゃんとその覚悟をして、俺は帰ってきたんだ。今度俺がアラガミ化した時は…」
「今度は俺が、殺してやる」
言い切ったソーマに、リンドウは目を見開き、それから首を振った。
「それは、駄目だ」
「何故だ。他の奴はともかく、俺なら……俺でも、ブラッドサージを使うぐらいは出来る」
生まれた時からアラガミを体内に持っていた自分ならば、他者の神機を扱っても喰われない自信があった。
たとえ喰われたのだとしても…リンドウを倒してからならば、それでいい。
そう思っているのに。
「それは駄目だ。お前に、俺の命を背負わせるつもりはねぇ」
「……なんで、」
自分では駄目なのか。あの新型ならば、彼を背負えるのか。
「誰かに、もう俺の命を背負わせる気はねぇんだよ。特にお前には」
そっと頬に手を当てられる。嗅ぎなれたタバコのニオイが鼻腔をくすぐった。
「あの時、俺が退路を開かせた事で、お前は俺の生死に責任を感じただろ?」
「それは、」
「その後、シオ、だっけ?アラガミの子の体を喰って、お前はその命も背負った」
「……」
「そんで、アラガミに同化したお前の親父さん」
一つ一つ数え上げ、彼は笑う。
「そんな重たいもん大量に持たされて、それでも愚痴一つ言わないお前に…今度は俺の命まで喰らえって?」
「俺は別に、背負ったつもりはねぇし、重たいなんて思ってねぇ」
「自覚ないから性質悪いよな」
決め付けられてムッとし、見上げればどこか泣きそうな笑顔で。
「前に言っただろ?次は置いて行かない。俺が死ぬ時は、お前も殺してやるって」
「……」
「俺がアラガミ化して討伐される時は、絶対お前も道連れだからな」
どうしてこの男は、いつもいつも物騒な言葉を、優しい声で囁くように言うのだろうか。
これでは、逆らいたくても拒めない。
「卑怯者」
「んー?どこからどうなってそんな結論にたっしたのかわからないが。いいぜ、卑怯者で」
ちゅっと可愛い音を立てて耳元にキスをされ、慌てた隙に耳元に流し込まれた睦言。
「お前の背負ったもん俺に半分よこせよ。俺の背負ってるもんも、半分お前に押し付けるから」
身勝手なくせに優しい言葉なんて、この男以外には言えはしないだろう。
ただうなずくのも悔しくて、目の前にある彼の耳に噛み付けば
「いてぇよ」
楽しそうに彼は笑った。
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次は置いて行かない~の件は「お帰り愚か者」から。
妙に長くなった上にどの辺が「罪」なのか。
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13. 螺旋
「どうして信じない?」
俺の言葉は螺旋を描き、ねじれてねじれて彼に届く。
「どうして信じてくれないんだ?」
「信じてる」
悲しげに目を伏せて。俺の言葉を真っ直ぐに捉えていたら…信じてくれたら、そんな表情をする筈もないのに。
「俺は、そんなに信用できねぇ?」
「疑ってる、訳じゃねぇよ」
どこまでも、お前に届かない。
「いや、だから本当に甘いもん苦手なんだって。お前からもらった物なら何年かけても食べきるけど、他の女に無理に押し付けられたり送られてきたのは食えないし食いたくないし。だからって恋人のお前に食わせるのも何だから引き取り手を捜してたらコウタが妹と食うって」
「言い訳なんていらねぇって言った筈だ。お前がバレンタインにコウタにチョコ渡した事実は変わらねぇじゃねぇか」
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実は現代パラレルの痴話げんか。オチはこんなもんだとバレバレだろうなぁとか思いつつ、シリアスオチには出来なかった。
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14. きせき
あー、お前ら。この腕輪を外すとどうなるか、もう榊のおっさんには聞いたのか?
おう、そうだ。ほら見ろ、この腕。
いやいや、違う。本来は腕だけじゃすまねぇんだよ。俺も一時アラガミ化した。
ああ、そうだ。本当なら一度アラガミ化した者はもう人間には戻れない。
俺か?俺の場合は運が良かったんだな。
奇跡って信じるか?そんな感じだ。奇跡が大量に重なって、仲間達の努力と根性のおかげで戻ってこれた。
でもな、実際そんな上手い話は早々転がってない。俺は本当なら死んでたんだ…99%の確立でな。
だからお前ら新人は、まず生き残る事と無茶しない事を覚えろ。
腕輪は簡単には壊れねぇが、俺みたいにアラガミの口に持ってかれる事もあるからなー。
それと、好きな相手も作ってたほうが良いかもな。泣かせたくねぇっ!て奮起できるから。
ただしソーマは駄目だぞ。第一部隊の。あれは俺のだから、手を出した奴はもれなく俺がぶっ殺すぞー。
さて、余計なおしゃべりはこの辺にしとくか。
死ぬなよ。必ず生きて帰れ。これは上官としての命令だ。
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15. シンドローム
「重症ね」
神妙そうに言う癖に、その目は笑っている。
「楽しそうだな」
低い声で睨みつければ、彼女はすぐに取り繕うのを止めて笑った。
「そうね、だって嬉しいもの」
「人が苦しんでんのに」
「今まで貴方が他者に与えた苦しみだわ。謹んで受け取りなさいな」
動悸・息切れ・眩暈。一人の人間によってもたらされるう症状。
笑ってくれれば嬉しい。泣かれれば苦しい。
そばに居たい、触れたい。
それはイワユル、お医者様にも治せないモノ。
「貴方にもそんな、人間的な感情が持てたのねぇ」
「酷い言われようだな」
今まで誰に想いを向けられても、そ知らぬふりをしてきた報いか。
この年で初恋なんて、救われない。
「初恋なのに童貞ではないのよねぇ」
「女の言うセリフか!」
「あらあら、私を女扱いなんてした事無いくせに」
幼馴染の親友と言葉を交わしながら、それでもつい視線で追いかけてた相手が、ふっとこちらを向いた。
視線が交わった瞬間、心臓がドクリと跳ねる。
だが相手は不機嫌そうに眉を寄せ、ぷいっと顔を背けて行ってしまった。
「……俺、なんかあいつ怒らせるような事したか?」
「知らないわよ。……私と二人でお喋りしてたから、嫉妬したんじゃないの?」
嫉妬。してくれたのならば、本当に嬉しいのだけれど。それよりもし誤解されたのならば、そっちの方が問題だ。
「おい、待てよソーマ!」
慌てて足を踏み出した時サクヤの大きな溜め息が聞こえたけれど、構わずソーマの乗り込んだエレベーターへダッシュした。
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サクヤ姉さんは漢前が理想。